人工知能〜介護と医療〜 20XX年、病院や介護施設は無人!?―AIが医療・介護職に与えるインパクト

いまやその話題を聞かない日はないくらい、AI(人工知能)研究はさかんです。

とくに医療・介護の分野でのAI研究はホットで、より的確な治療・診断・介護が期待され、また重労働の医療・介護従事者を、その負担から解放することが期待されています。

一方で、多くの仕事がAIにより自動化・無人化されると予想されており、病院や介護施設でも、患者以外の人間がいなくなるのでは?などと予想されることもあります。

病院勤務の方や介護職の方にとって、AIとは敵なのでしょうか。それとも味方なのでしょうか。

これを考える前に、まずは現在の医療・介護分野でのAIの応用例、またその応用可能性について例を見ていきましょう。

医療・介護分野でのAI:①診断

AIがお医者さんになる、という未来像を聞いたことのある方もいらっしゃることでしょう。

例えばすでに現在、放射線科においては、CAD(Computer aided detection/diagnosis、コンピュータを用いて診断する技術)を導入し、医師の負担の軽減をはかっている病院もあります。

CT画像やMRI画像から病気を診断するAIの研究は、ベンチャー企業レベルから国家プロジェクトレベルまでと幅広く展開されていますが、

少なくとも放射線診断医の仕事を完全に代替するようなAIはいまだ登場していないようです。

また2015年、IBMの開発した人工知能「ワトソン」が、膨大な量の医学論文を学習し、医師でも見抜けなかったガン患者のガンの状態を正しく診断できた

というニュースが出ました。このように、病気を診断するAIの開発は現在ホットな領域です。

医療・介護分野でのAI:②介護ロボット(脳とコンピュータの連携)

まるで映画のような、脳や神経と連携するコンピュータの研究が現在世界的に進められています。

BMI(Brain Machine Interface)といい、体に麻痺のある患者さんが、運動を行おうとする際に発生する脳波をコンピュータが分析・学習し、

麻痺のある部位を動かそうとする脳の活動を読み取ってその部分を機械によって動かそうとする技術です。

すでに日本では、サイバーダイン社の開発したロボットスーツ「HAL」が薬事承認されており、介護・福祉の現場で応用されています。

また医療分野のほか、肉体労働をやりやすくする目的のロボットスーツも開発されています。

上記のような、脳波と身体の動きがつながるために、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれるAIの動作原理が用いられます。

医療・介護分野でのAI:③新薬開発

新薬開発の過程はとてつもなく長く、かつ困難な道のりです。

具体的には、数十万種類の候補物質が、多くの実験・試験をパスして、薬事承認・製造・販売が許可され、さらに流通後の有害作用の有無などが厳しくチェックされます。

これだけ厳しい過程を踏むため、一般に、200億円以上のお金と10年以上の歳月が新薬開発に必要と言われます。

こうした、莫大な費用と時間がかかる創薬の過程にAIを用い、開発の負担を格段に減らそうとする試みがあります。

これには「ビッグデータ」というAIと一緒に語られることの多いものも関係します。

具体的には、化合物のビッグデータの中から、目指すべき効果を持つと期待される物質をAIが解析・選別することで、新薬開発の一助とするという試みです。

医療職・介護職での「AI脅威論」―「弱いAI」と「強いAI」

以上のように、医学研究や医療・介護現場においてAIは幅広く応用されています。

未発達の領域も多いため、その可能性は無限大ともいえるかもしれません。

しかし、こうしたAIの発展において、人間の仕事がなくなることを危惧する「AI脅威論」がささやかれるのも常です。

医療現場においてもそれは同様のことでしょう。

上記で見てきたAIとは、たとえば医療用画像の読影のような、特定の仕事を人間より効率的に行う能力のある「弱いAI」と呼ばれるものです。

一方で人間のように様々なことができ、かつコミュニケーションもできるようなAIは「強いAI」と呼ばれており、これは未だ実例もないようです。

「弱いAI」は人間の優れた道具

今現在すでに、人間の周りには様々な機器があり、それらを使って我々は仕事を効率的にこなしています。

発展するのが上記のような「弱いAI」だけである限り、AIを操作するのは常に人でありつづけることでしょう。

つまり、「弱いAI」しか発展しない限りは、人の仕事はなくならず、むしろ楽にしてくれる便利な道具となる、と予想されるということです。

少なくとも言えることは、「強いAI」が完成しない限り、人間は医療現場に不可欠、ということです。

しかしこれは逆に言うと、人間が勉強すべきことが増えることを意味するかもしれません。

医療・介護の現場で使われるAIをしっかりと学び、活用できる人間でなければ、病院や介護施設で有用な人材になるのは難しくなる時代が来るかもしれません。

現実問題、AIを使えるか使えないかで、医療・介護職における収入格差も出てくるとも考えられます。

とはいえ、激務である病院や介護施設での仕事において、AIが人間の実働を減らしてくれることは十分期待されます。今後の研究に目が離せません。

「強いAI」ができたら?

では、もし「強いAI」が開発されたら、医療行為は全て機械が行うような未来が待っているのでしょうか?

おそらくそれでも、人間の医療従事者は必要とされるでしょう。

確かに、人間よりミスなく様々なことができるAIができたら、手術や介助などの行為を人間がすることはなくなるかもしれません。

しかし、患者さんに寄り添い、精神のケアをすることは、AIには難しいことでしょう。

人対人としてのコミュニケーション。これこそが、人間にしかできないことなのではないでしょうか。

現在でも、医師や看護師、介護士の仕事にはサービス業の側面があると指摘されます。

AI時代には、そうしたサービス業の側面がより強調される、ということは想像に難くありません。

そのため、AI時代には病院や介護施設とは、その施設の従業員が良いコミュニケーション・メンタルケアを行えるかが一つの評価軸となる、という予想も成り立ちます。

まとめ

「コミュニケーション」は、永遠に人のものだ

AI脅威論を論じる上で「人間にしかできないこと」が議論されますが、そのうちの一つが、人間としてのコミュニケーションなのではないでしょうか。

人間の身体を持たず、人間として生きてはいないAIがいかに発展しようとも、この分野において人間に敵うとは想像しにくいでしょう。

人の最期を見届ける医療・介護の現場でのコミュニケーションとは、ある意味、人間対人間の究極の関わり合いだとも言えます。

AIが病院・介護施設に与えるインパクト、ならびにそれによる人間の役割を考えることは、AI脅威論に対する一つの答えを出すのではないでしょうか。

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