ビジネスマンに求められる必要なスキルには、さまざまあると思いますが、
ここでは、会社などでたずさわっている業務の内容や、計画、見とおし、結果、主張などを報告・発表するときに必要とされる能力、
および扱っている商品やプロジェクトを宣伝・アピールするときに必要な「プレゼン能力」についてお話ししましょう。
プレゼンテーション(プレゼン)
プレゼンテーション (英語: presentation) ということばの意味は、情報をつたえる手段のひとつで、聴きてに情報をしめし、その情報を理解し、なっとくしてもらう行為(宣伝など)のこと。略してプレゼンという。
などと辞書を引くとでてきます。
かつての日本では必要とされなかったプレゼン
かつての日本では、企業の企画コンペなどでは、きれいでカッコイイ絵コンテ(写真など)やパース(完成予想図)、
ぶあつい企画書や予算をかけた動画などの出来ばえが勝敗をきめるポイントとなり、「プレゼン能力」がなくても生きぬける国だったのです。
必要とされるようになったわけ
しかし近年になり、日本企業が海外に進出していくようになり、また、外資系の企業が、日本企業の株や、会社そのものを買かったりして、
経済を動かすようになってくると、それまでの日本的なやり方が通用しなくなってきたのです。
つまり、会社内でも商取引の現場でも「見ばえのする絵コンテやプリントなどによる形ばかりの提案」から「論理的なプレゼンテーション」がもとめられる時代になってきたのです。
だからこそ求められる
日本人が欧米人にくらべて特におとる能力の一つに「プレゼン能力」があげられます。
学校では「プレゼン」なんて教わっていないのだから、あるていど仕方のないことですが、だからこそ、国際競争をたたかっていくためには、プレゼンスキルをのばすことが必要になるわけです。
日本企業・日本経済ぜんたいの発展のためにも、ビジネスマンひとり一人に、ことさら求められるわけです。
「プレゼン」が意味するもの
いまネットで検索すると、「プレゼンを成功させるには」とか「上手なプレゼントとは」、「話ベタを克復するには」、「プレゼンの上達法」など、
たくさんの情報が目にとびこんできます。それぞれ良いことをいっているのでやってみたいと思っても、どこから手をつけたらよいのか迷ってしまい、
なかなか前にすすめない方も多いのではないでしょうか。
基本にたちかえって
プレゼンの重要な要素をざっくりというと、「だれに」「なにを」「どうつたえるか」の3つです。
それではここで、それぞれをもうすこしつっこんで考えてみましょう。
「だれに」とは
「だれに」とは、聴きて(相手)がだれなのかということです。
プレゼンをする場が、社内の会議であれば、聴きては同僚や上司です。自社の商品や企画を、他社(A社)に売りこむためのプレゼンならば、
聴きてはA社の社員や担当者です。それではなぜ「だれに」が大切な要素なのでしょう。
自社内のばあいは、あなたの会社が何をしている企業なのか、いまこれから何をしようとしているのか、企業としてどんな方向に進もうとしているのか、
また社員に何をのぞんでいるのかを知らなければ、聴きて(相手)の求めていることがわかりません。
相手がA社のばあいも同ように、A社がどんな企業なのか、どんな商品や企画をほしがっているのかをしらなければ、聴きてにアピールできません。
これが「聴きてがだれなのか」重要な要素のひとつになる理由です。
プレゼンは一方的に内容を説明したり、伝えることだけではなりたちません。
相手がのぞんでいること、ほしがっているものを与える(プレゼントする)ことができなければプレゼンにはならないのです。
「なにを」とは
ことばのとおり「なにを」はプレゼンの中身のことです。
何を伝えなければならないのか、何を与えなければならないのか、それは求められていること、望まれていることに応えることです。
「なにを」を決めるポイントは「だれに」のなかにあります。
相手(聴きて)がだれであるかを知ることにより「なにを」提供(プレゼント)すればいいかが見えてくるはずです。
ここまできて、相手を知ってプレゼンしなければならない内容もあるていど決めることができました。
では、これをどうやって伝える?これがつぎのもう一つの要素です。
「どうつたえる」とは
プレゼンのもくてきを達成するためには、「どうつたえる」が成否のカギをにぎっているといっても過言ではないでしょう。
ひとは、目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる五つの感覚(五感)から情報をとらえるといわれています。
「どうつたえる」とは、この五感のどの部分にうったえて伝えるかです。プレゼンの場合はおもに目と耳が重要となります。
食品かんけいのプレゼンでは、舌(味覚)や鼻(臭覚)も重要なポイントになりますが、いっぱん的には、目(視覚)と耳(聴覚)にうったえるプレゼンが主となるでしょう。
つまり、どんな方法や手段で目と耳に情報をつたえ、相手が求めているものを提供することができるかを考えることが「どうつたえる」かです。
プレゼンするには手段と道具(技術)が必要
まえの章で「どうつたえる」がプレゼンの成否のカギをにぎっているとお話しました。
手段と道具が伝えたい内容を表現する「どうつたえる」ことそのものです。
「手段と道具」というと、パソコンやパワーポイント、映像や動画、プロジェクターなどの機材、グラフや比較表などの資料をイメージするかたもおおいとおもいますが、
じつは最大の道具はあなた自身・プレゼンター本人なのです。
あなたが最大の道具(武器)
プロジェクターから映しだされる映像や画めんが、どんなにすばらしくできていたとしても、目(視覚)からはいる情報は、
耳(聴覚)からはいる情報(プレゼンターのことば)があってはじめて、相手のこころにひびき、うまく伝わることになるのです。
もちろん、シンプルで的をえた「ことば」であることが肝心です。
でもあなたの武器は「ことば」だけではありません。そのときの表情、手振り、身振りがそのことばを強く印象づけることになります。
また、資料をまとめたり、パワーポイントを使いこなすのもあなたです。だから、あなたが最大の道具なのです。
武器(道具)を手に入れるには
話べただからプレゼンは苦手とおもっているかたもいるでしょう。でも、話し方がうまいとか、へたではありません。
プレゼンは相手が望んでいることを、シンプルにストレートにつたえることです。話べたなひとは、プレゼン能力がないのではありません。
やり方を知らないだけなのです。武器を手に入れる方法を知らないだけなのです。
スピーチとプレゼンのちがい
ある友人Aから聞いた話なのですが、こんなエピソードがあります。
友人Aは学生時代に弁論大会で優勝したりして、話すこと・理論的に内容を聞き手に伝えるスキルには自信があるので、プレゼンは得意なはずとおもって、社内のあるプレゼンにのぞみました。
その途中に上司から質問され、それにうまくこたえられずに、そのあとはガタガタになってしまったというのです。
ではどうしてこんなことが起きるのでしょう。友人Aはプレゼンではなくスピーチをしてしまったのです。
スピーチとは「話し手本位」のコミュニケーション行動、つまり「話し手が何を考え,どうしたいのか」について語ることをいいます。
プレゼンは「聞き手本位」のコミュニケーション行動です。彼は流暢なしゃべり方で、きっと表現もすばらしかったはずです。
でもそれがイヤミに感じた上司が、いじわるな質問をしたのかもしれません。
友人Aは相手が何を求めているかをあまり考えずに、「話し手本位」のプレゼンをしてしまったのです。
自信のなさをこえること
友人Aのように、はきちがえた自信はマイナスになりますが、自信のないことばや表現も説得力にかけプレゼンでは大きなマイナス要素になってしまいます。
おおくのアスリートやアーティストは、その競技会やステージのまえは緊張してプレシャーに押しつぶされそうになると、口をそろえていいます。
オリンピックや世界大会のメダリストたちは、インタビューで普段の練習どおりに自分をだせるようやったことが結果にむすびつき、メダルをとれたとよくいいます。
これは「自信のなさ」をたえまない練習でつけた「ほんとうの自信」がプレシャーに打ちかって、自分を表現できたからなのです。
プレゼンのばあいもまったく同じです。アスリートの練習にあたるのが、相手(聞き手)がどんな人なのかをよく知ろうと努力すること、
それによって導きだされた相手が求めているもの、何を伝えることがベストなのか、そのためにはどんな表現の手法や手段をもちいればよいのか、
そのためには自分は何を身につければよいかと努力することで、最大の敵である「自信のなさ」をのり越えて「ほんとうの自信」がうまれてくるはずです。
その自信から発することばは、かならず相手(聞き手)のこころにひびく説得力のあることばになるとおもいます。
まとめ
ビジネスマンに必要なスキル/プレゼン能力とは、はきちがえた自信やおごりがあったならば、いったんすてること。
自信のない自分があったなら、ひとつひとつ、一歩づつ、アスリートと同じように、練習や経験をつみかさねて「ほんとうの自信」を身につけることです。